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● 記憶の施術者 ●

「お前誰だよ」「アンタ誰?」
 一ヶ月前から始まった怪奇現象。友人達から突きつけられる辛辣な言葉。
 自分のことを知っているはずなのに、まるで初対面であるかのように振る舞われる。
 が、時間が経てば何事もなかったかのように思い出す。
 からかわれているのか? だが何のために?
 訳が分からず苛立つ村雲真夜。そんな彼の前に突然現れたのは、高下駄に喪服、釣り竿を担いだロングブロンドの奇抜な美少女。
 【記憶の施術者】だと名乗る彼女の目的は……ポイント稼ぎ? 連鎖? 上級職に就く?
 ……訳が分からん。
 だが、今重要なことは、ついに『春』が訪れたということ。
 世間では、人の意識を奪い去るという凶悪犯が闊歩しているらしいが。しかもそいつはどんどん自分の住んでいる所に近付いてきているらしいが。そんなモンは関係ない。どーでもいい。知ったこっちゃない。
 今は欲望の限り青春を謳歌するだけだ!

第一話『怪奇! 喪服金髪釣り竿美少女!』

最近、一つ発見したことがある。
どうやら記憶喪失というのは感染するらしい。

第二話『愕然! コレが幸せの結末!?』

この世には見てはならない物が二つある。
一つは月末の預金残高。もう一つは喪服の中身だ。

第三話『戦慄! 犯人接触!?』

子供の頃の嫌な思い出は、大人になると良い思い出になる。
ドMなのかドSなのかはっきりしやがれ、この大馬鹿野郎。

第四話『到来! 猟銃しょったカモの群れ!』

腐女子は氏ね。
そう思っていた時期が俺にもありました。

第五話『告白! 運命の相手は貴女です!』

必要な記憶、不必要な記憶。必要な思い出、不必要な思い出。
あったとしても、おかしくないのかもしれない。

第六話『決断! 目を逸らすのはもうやめだ!』

過去は美化される。不要な物は削ぎ落とされていく。
ゆるんだ地盤は現在を脅かす。恐怖に駆られた未来は逃げていく。

第七話『覚醒! コレが本当の自分だ!』

記憶喪失の特効薬は精神ショック。昔から相場は決まっている。
そしてろくでもないことが起こる。こちらも相場は決まっている。

第八話『拒絶! もうソレ以上喋るな!』

昔は昔。今は今。大人というのはそうやって割り切れるらしい。
なら自分はまだ胎児といったところか。

第九話『終結! コレが答えだ!』

“最初から分かっていれば苦労しない”“知っていれば上手くできた”
ソレは無様な負け惜しみ。そして勝ち組への第一歩 。

最終話『開幕! 新生活は絶叫とともに!』

あらゆる挑戦にはチャンスが三回まで与えられている。
一回目は失敗するために。二回目は後悔するために。そして三回目は絶望するため……オイ。

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