アシェリー様のお通りだ!

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第五章

 体の小さいガルシアだ。通風口や換気口を伝って外に出るのはそれ程難しい作業ではなかった。それに人間が猫の顔の違いをハッキリ見分けられるわけではない。特徴を知らされていても、聞いただけではガルシアだと断定するのは難しいだろう。そしてガルシアの姿を直接見たのは謁見の間にいた少数の者達だけだ。
 例えば、調理室に入り込んでコックに見つかった場合、『このバイ菌の塊! どっから入った!』と罵倒されて、外に放り出されるのが現実だった。
(くっそー、酷い目にあったぜ……)
 裏口からゴミ同然の扱いで投げ捨てられたガルシアは痛む額を押さえつけながら、ゼイレスグの城下街を疾駆していた。視界に映る無数の人の足が、もの凄い勢いで後方に押し流されて行く。
(レグリッドのヤロー。これで気ぃ付いたろーな……)
 できればアシェリーの側から離れたくなかった。自分の正体をレグリッドに教えない為にも。そのため、ガルシアはコレまでどんなことがあっても、アシェリーから離れたことはなかった。
 だが今はそんなことを言っている場合ではない。何としてもアシェリーを救わなければならない。
(けどま、取りあえずコレでレグリッドの狙いはアシェリーから外れたな)
 レグリッドが本当に欲しいのはガルシアの命だ。コレまでは自分の身を守りきる力が無かったために、アシェリーに身代わりになって貰っていた。
 彼女は強い。アシェリーに本来の力が戻れば、王家騎士団の中で最高の戦闘能力を誇る『満月』ですら太刀打ちできないだろう。ソレは間違いない。なぜならアシェリーをそうしたのはガルシア本人なのだから。
 だが、その過信が今回のような結果を引き起こした。
(まさかあの鎖持ち出してくるとはな……。キーロック解析しねーと、いくら俺でも外せねーぞ)
 全ては自分の責任だ。アシェリーは必ず救わなければならない。彼女はまだまだ必要な存在だ。この星にとっても、そしてガルシアにとっても。
(誰か、誰かいないか……アシェリーの味方になってくれそうな奴は、誰か……)
 チャンスは四日後の公開死刑の時。あのペースで鎖に力を奪われ続ければ、アシェリーは間違いなく自力で立てないほどに衰弱してしまうだろう。アシェリーが自分で抜け出すのは厳しい。
 ならば公開死刑をぶち壊し、アシェリーを担いで逃げ切るしかない。それだけの気力を持った人物を四日以内に捜さなければならない。
(いや……そんなに余裕ねーぞ)
 レグリッドは自分に目標を変更してくる。彼だけなら何とかなるだろうが、恐らくこれまでのように強力な手駒を使って来るだろう。見つかれば確実に殺されると考えた方がいい。そうなる前にレグリッドよりも強い者と合流しなければならない。自分の身を守り、そしてアシェリーを救い出してくれる人物と。
 猫の体では四日間も逃げ切る自信はない。せいぜい一日か二日だ。
 ガルシアは少しでもゼイレスグ城から離れるために全力で走りながら、コレまでの旅で出会ってきた者達の顔を順番に思い浮かべていく。
(ゼド、か……今のところアイツが第一候補だな)
 ゼドはアシェリーに強い恩義を感じている。獣人である彼の強さは申し分ない。ガルシアが頼み込めば、彼の性格からして喜んで力になってくれるだろう。
 だが、ただでさえ戦争が噂になっているアッドノートの民だ。もしゼドがこの件に関われば、本格的な戦争に発展するのは間違いない。そうなればまた多くの血が流れる。アシェリーはそんなことまでして助けて欲しいとは思わないだろう。
(けどよ。お前にゃわりーけど、俺にとっちゃ何千って命より、お前一人の方がずっと大事なんでな。俺ぁもう、お前に入れ込んじまったからよ。悪く思うなよな)
 苦笑を漏らし、ガルシアはゼドのいるオビス島に最短で行く方法を思い描いていく。
 視線を少し上げ、海路と地底路のどちらで行くか思案していた時、顔面に痛烈な衝撃が走った。
「ってー! テメーどこ見て歩いてやがる!」
 ガルシアは、自分が選んだ者以外には「にゃー」としか聞こえない声で悪態を付く。
「お前は……」
 ぶつかったのはガルシアが知っている人物だった。


 ヴォルファング=グリーディオ、二十五歳。紅き牙の年、敬虔なる慈母の日の生まれ。王家騎士団に憧れて修行を重ねる青年は今、酷く落ち込んでいた。
「く、くくく、黒猫ぉほ!?」
 突然自分の足にタックルをかましてきた物体を見下ろすと、ソコには黒い塊。更によく見ると、ピンと張った髭、大きな金色の瞳、三角形に立った耳、お尻から伸びる長い尻尾。
 どこからどう見ても不幸の象徴、黒い猫だった。
「うおおおぉぉぉぉ! なんてことだ! 聖なるゼイレスグにたどり着いた初日にこんなハプニングが!」
 ゴミと見間違えそうな汚いナップサックを取り落とし、ヴォルファングは天を仰いで号泣した。
「落ち着け、落ち着け俺! 大丈夫だ心配ない。黒猫を見た時の対処法其の壱!」
 ボロボロになるまで使い込まれたレザーアーマの胸元に手を突っ込み、ヴォルファングはピンク色の表紙の手帳を取り出す。そして開いたページをおもむろに音読し始めた。
「逆立ちになって腰を百八十度ねじり、更にブリッジの体勢になりながら自分の一番恥ずかしい体験を語る! よぉしコレだ!」
 自分で宣言した通りに体を捻り上げ、ヴォルファングは大声で叫ぶ。
「俺が初めて告白した相手はー! 女装した男だったー!」
 あまりに赤裸々で生々しい発言が、ゼイレスグの蒼穹に飲まれて消えていった。
「これで問題なし!」
 自分を中心として急激な勢いで人の波が引いていくが、ヴォルファングは全く意に介した様子もなく、腰に手を当てて満足気に笑う。
「おい。テメー、ヴォルとか言う奴だな」
 クセの強い蒼髪を乱暴に掻きむしりながら、その場を去ろうとしたヴォルファングの足が止まった。自分の周りに人はいない。
 さっきまで井戸端会議に賑わっていた主婦達も姿を消し、広場の噴水から水音が虚しく届くだけだ。魔法カードでバトルごっこをしていた子供達も、親に連れられて家に閉じこもってしまった。
 白曜石を埋め込んで作られた白を基調とする住宅区は今、見事なまでに閑散としていた。
「……気のせいか」
 きょろきょろと辺りを見回して、もう一度誰もいないことを確認する。そしてゼイレスグ城に向けて一歩踏み出そうとした時、ズボンの裾を引っ張られた。
「おい、無視すんなよ。下だ下っ」
 一瞬、完全に体が硬直する。そして殆ど反射的に目線を下げ、視界に映ったのは先程の黒猫だった。
「よぉ、久しぶりだな。オビス島じゃ災難だったな」
 口の端が耳に届かんばかりに顔を引きつらせ、ヴォルファングはヨロヨロと後ずさる。ある程度の距離が開いたところで逆立ちして体を百八十度ねじり、そのままブリッジの体勢を取った。
「俺の二度目の告白はー! 若作りしたオカンの姉貴だったぁー!」
 あまりに痛々しく聞くに耐えがたい告白が、純白の大地に練り込まれていく。
「まぁ落ち着けよ。お前が過酷な人生歩んできたことは認めてやるからさ」
「く、黒猫を見た時の対処法其の壱が効かない……。では其の弐!」
「あーくそ! 埒があかねー! 今アシェリーがやばいんだよ!」
 胸元からピンクの手帳を取り出そうとした手が途中で止まった。
 さっきまでの動揺が嘘のように静まって行き、代わりに筆舌に尽くしがたい熱い思いが込み上げてくる。
 それ程衝撃的なフレーズが黒猫の言葉に含まれていた。
「お前……まさかアシェリーがいつも連れてるガルシアとか言う猫か?」
「名前まで覚えてくれてるとは光栄の至りだね」


 商業区にある飲食店の二階。黄色いパラソルが立ち並ぶオープンテラスの一角に陣取り、ヴォルファングは巨大パフェを頬張っていた。猫と会話する寂しい男を避けてか、ココでも周りに人はない。
「……なるほど。大体の話は分かった」
 ほっぺたに付いたクリームを舌で器用に舐め取りながら、目の前でルカの実ジュースをがぶ飲みしているガルシアを見る。
「随分独り言の多い女だと思っていたら、お前と話していたのか」
「そーゆーこった」
 一気にまくし立てて話し疲れたのか、ぷはぁとオッサン臭い仕草で息を吐くと、ガルシアは木製のテーブルの上で横になった。
「で? このままだと四日後にアシェリーが殺される、と」
 ガルシアの話でアシェリーのことをさも初めて聞いたように装い、ヴォルファングは聞き返す。
「ああ。でよ、ダメ元なのは分かってんだ。お前さんがアシェリーを嫌ってるのはよーっく知ってる。けど、どうしても何とかしてやりてーんだ。ソレには俺だけじゃ無理なんだよ。お前だって、こんな形でアシェリーに勝ち逃げされんのは気にくわねーと思うだろ?」
「勝ち逃げ、ね……」
 そんなことはガルシアに言われる前から感じていた。
 昨日、アシェリーがゼイレスグで公開死刑に処されるという話を聞いた。聞いてすぐに、ふざけるなと思った。だから少ない貯金をはたいてまで地龍に乗り、大急ぎでゼイレスグに来たのだ。
「頼むよ。このとーりだ! アシェリーを助けてやってくれ!」
 ガルシアは猫の骨格で器用に正座すると、小さな額をテーブルに押しつける。
「どう、するかな……」
 食べかけのパフェを横にやって、ヴォルファングは目を細めた。
(俺は、ココに来てどうするつもりだったんだ?)
 間抜けなことに、ゼイレスグに着いてからのことを全く考えていなかった。ただ気持ちだけが先走って、気が付いたらゼイレスグの街に足を踏み入れていた。
(よく分からんが……何とかするつもり……だったんだろうな……)
 ヴォルファングがアシェリーに抱く想い。ソレは憎しみに似て非なるモノ。
 ――五年前。当時二十歳だったヴォルファングは、自分が剣の師匠と仰ぐ男に着いて山に籠もり、ひたすら修行の毎日を送っていた。目的はゼイレスグの王家騎士団に入団するため。理由は極めて不純で単純なモノだった。
 モテたい。女にモテて告白されたい。そうすれば悲しい間違いを犯さずにすむ。
 よこしまな動機ではあったが、その思いは誰よりも強く、おかげで過酷な修行でも耐えることができた。そして剣の才能もあったのだろう。僅か一年という短い期間で、師匠の腕前を抜くことができた。
 免許皆伝。胸を張って入団試験を受けようかと思った矢先、アシェリーに出会った。
 彼女は旅の途中、偶然ヴォルファングのいた森に立ち寄っただけだった。
 アシェリーを見てヴォルファングは思った。
 ――いい女だ、と。
 ヴォルファングは『こんな所で女性だけの旅は危険でしょう』と街までの道案内役を申し出た。丁重に断られたがアシェリーの美しさに見惚れて、ヴォルファングはついつい食い下がってしまった。そしてソレが彼女の逆鱗に触れた。
 五節棍という見慣れない武器。鋭い身のこなし。女性とは思えない怪力。
 完敗だった。スピード、パワー、武器さばき。戦闘のありとあらゆる面に置いて、アシェリーはヴォルファングを遙かに凌駕していた。


『その程度の実力で王家騎士団に入りたいなんて笑わせてくれるじゃないか。今からでも遅くない、止めときなよ。あそこはアンタが思ってるほどカッコイイ場所じゃない』


 ついさっきまで確固たるモノとして自分の中にできあがっていた、自信という名の心の支えは微塵となって粉砕された。
 以来、アシェリーを倒せないようでは王家騎士団の入団試験に受かるはずもないと言い聞かせ、ヴォルファングは彼女を追って世界中を回った。自分への不甲斐なさと、アシェリーの強さへの嫉妬を糧にして。
「ヴォル……やってくれないか」
 すがるようなガルシアの視線。
 もしここでアシェリーを見捨ててしまったら、今までの苦労が水の泡になる。それだけは納得行かない。奇病を撒き散らしたとか、戦争の仕掛け人だとか、そんな下らない理由でアシェリーを失うわけにはいかない。
(アシェリーを倒すのは、俺だ……!)
 答えなど、悩むまでもなく最初から決まっていた。別に助けるわけではない。獲物を横取りさせないだけだ。
「俺様にこんだけデカい借りを作るんだ。高く付くぞ?」
「じゃあ……!」
「よし! 思い立ったら吉日! 今すぐ行くぞ!」
「へ?」
 勢いよく立ち上がり、愛用のロングソードを抜き放ってゼイレスグ城に突きつけるヴォルファング。
「アシェリー奪還大作戦! ただ今より開始する! 行くぞ皆の者おおぉぉぉぉ!」
 とりゃあ! と気合いを入れてテラスに張り巡らされた柵を跳び越え、ヴォルファングはゼイレスグ城へと疾走した。


 高さ十メートルはあるかと思われる巨大な城門。地龍の鱗の頑強性に限りなく近づけた赤銅色の門番は、意思を持たずして見る者を圧倒する。
「ここか……」
 ゼイレスグ城正門前。抜き身のロングソードを片手に、ヴォルファングは悠然とした態度で城門を見上げていた。
「『ここか……』じゃねーだろ! バカかテメーは! こんなトコに一人で来てどーするつもりなんだよ! いいから剣しまえ! 見つかったら一発で捕まるぞ!」
「ふ……騎士に剣をしまえなど、パフェからサクランボを取れと言っているようなモノ。激しく却下だ」
 ショルダーパッドの上でわめくガルシアを一言の元に切り捨て、ヴォルファングは気取った様子でロングソードの腹に自分の顔を映し出す。磨き上げられた剣は鏡のように光を反射し、不敵な笑みを浮かべる蒼髪の青年の顔を返してきた。
「とにかくこっから離れろよ! 勝負は四日後だっつってんだろーが!」
「だが、待っている間もアシェリーはどんどん衰弱して行くのだろう」
 ガルシアの話ではアシェリーは力を奪い取る鎖に繋がれているらしい。今はまだ平気らしいが、四日後どうなるかは分からない。
「そ、それはそうだけどよ……」
「なら決まりだな」
 弱々しいアシェリーなど見たくもない。
 ヴォルファングは城門の前まで歩み寄ると、剣を高々と掲げて叫んだ。
「開もーん! 我が名はヴォルファング=グリーディオ! 現在地下牢に捕らわれている女、アシェリー=シーザーを奪いに来た! いざ尋常に勝負しょうぶー!」
 肩の上でズッコケたガルシアが、視界の隅に映った。
「アホかああぁぁぁぁ! わざわざ宣戦布告してどーすんだよ!」
「ふ……騎士たる者、常に正々堂々と。いついかなる困難も真っ正面からブチ当たって挫けねばならん」
「挫けるな!」
 そんなやり取りを交わしている間に、城門が重厚な音を立ててゆっくりと内側に開いていく。中から出てきたのは数名の兵士達。皆、胸の辺りに大鷲の描かれた全身鎧を身に付けている。鎧の色は白。王家騎士団『満月』の団員達だ。
 彼らの後ろには青々と茂る背の低い芝生。そこに紅い色の一枚石が敷き詰められ、さながらレッドカーペットのように城の入り口へ続いている。
「何だお前」
「同じことは二度言わん」
「……昼間から酔っぱらうのもいいが、場所をわきまえるんだな」
 コチラから見て逆三角形の陣形を組み、『満月』は無駄のない挙措で間合いを詰めてくる。手はすでに腰の剣に掛けられていた。
「おい、もーやるしかねーぞ。自信あるんだろーな」
「知らん」
 泣きそうな声で聞いてきたガルシアを、にべ無くはねつける。
「知ら……ってお前!」
 アシェリーを倒すため、我流ではあるが一日も休むことなく剣の腕は磨いて来た。だが、それが王家騎士団、しかも正統剣技の使い手であり騎士団の中でも最高の戦闘能力を持つ『満月』に通じるかどうかは分からない。
(ココで死ねば、俺はそれまでの男だったということ)
 もともと裏でコソコソやる小賢しい戦法とは無縁の人生を送ってきた。今更、どんな緻密な策をガルシアが弄したところで、それを実行する自信の方がない。ならば残されたのは正面突破のみ。 
 ヴォルファングは大きく息を吸い込み、
「為せば為る! 為さなくても為らす! 何事も始まりよければ全て良し! 猪突猛進、老若男女、隣の客はよくメシ食う客だ! 心頭滅却しても死ぬときゃ死ぬ! 行っくぞああぁぁぁぁぁぁ!」
 『満月』六人相手に正面から突っ込んだ。


 相手と自分の実力の差を感じるには、最初の踏み込みだけで十分だった。
 何の予備動作もなく、膝のバネを爆発させた突進に『満月』は全員反応できなかった。
「とぉりゃ!」
 一番手近にいた兵士の懐に一瞬にして潜りこみ、横薙ぎに相手の剣を払い落とす。
「な――」
 吃音のような声と共に甲高い金属音が響く。
 ヴォルファングは左脚を中心に体を半回転させ、後ろにいた兵士の頭部にロングソードを叩き付けた。全身鎧で守られているため傷を負わせることはできないが、耳元でした鎧と剣がぶつかる轟音で聴覚を奪いとる。
 一瞬のひるみ。だがそれだけで十分だった。
 最初と二人目の兵士の鎧に両手を当て、ヴォルファングは自分のエネルギーを送り込んだ。バックステップを踏んで大きく距離を取り、両手を眼前で交差させて叫ぶ。
「締め上げろ! 『鉄鎧金剛君』!」
「っがあぁぁぁぁぁぁ!」
 ヴォルファングのディヴァイドと化した自分の鎧に締め上げられ、二人の兵士は悶絶した。そのまま地面に引き込まれるようにして体を傾けるが、途中で静止すると今度は幽鬼の如く立ち上がる。
「ふ……全身鎧がアダとなったな」
 完全にヴォルファングの傀儡となった二人の兵士は、体向きを変えると味方に斬りかかった。
「くそ! おい目を覚ませ!」
 仲間の剣を兵士の一人が受け、その後ろにいたもう一人が鎧に手を当てる。
(さて……)
 ヴォルファングは目を細めて、その様子を注視した。
 『満月』ともなれば団員全員がディヴァイドを使えて当然だ。問題は彼らのディヴァイドがヴォルファングの支配を打ち破れるかどうか。
「ダメだ! ヤロウ全力でエネルギー注ぎ込んでやがる!」
 その言葉にヴォルファングは勝利を確信した。
 二人に使ったエネルギーはせいぜい二十パーセント程だ。全力にはほど遠い。
 そして兵士が四人掛かりでエネルギーを送り、ヴォルファングのディヴァイドだった二人の動きがようやく止まる。
「阿呆共が……」
 芝生を抉って力強く跳躍し、残った四人の兵士の後ろに回り込んだ。
 驚愕に染まった彼らの顔がこちらに向いた時には、すでにヴォルファングは剣を振り上げている。
 彼らがどのくらいのエネルギーを全身鎧に注いだのかは知らないが、本体に残っている力は微々たるモノだろう。最初の突進以上に反応が鈍い。
「ふっ!」
 腹の奥から細く鋭い息を吐き出し、鎧の隙間を正確に縫って斬撃を打ち込んでいく。
「案ずるな。峰打ちだ」
 白目を剥いて大地に吸い込まれていく兵士達を一瞥し、ヴォルファングは城の入り口へと向き直った。
「……お前、すげーじゃねーか」
 肩から聞こえるガルシアの感嘆の声。
「でもよ、その剣って両刃だよな」
「あ」
 後ろ頭を掻きながら、ヴォルファングは聞かなかったことにした。


 先程の騎士団員は『満月』とはいえ下級の騎士だったのだろう。
 城内へと入り込み、怒濤の如く襲ってきた騎士達の腕はかなりのモノだった。
 『満月』に、魔導と剣術の両方を使いこなす『双月』も加わり、さすがのヴォルファングも後退せざるを得なかった。
「で、地下牢はこっちであってるんだな?」
 白い壁で囲まれた長い廊下を走りながら、ヴォルファングは肩のガルシアに話しかける。敵の目をかいくぐり、かなり遠回りして何とかこの通路にたどり着くことができた。コレもガルシアが城の構造を正確に把握していたおかげだ。
「ああ、取りあえずこのまま真っ直ぐだ。お前の方は体大丈夫なのか?」
 ヴォルファングの体は、あちこちから血が滲んでいた。愛用のレザーアーマーも殆ど原形をとどめておらず、辛うじて胸の辺りに張り付いている程度だ。
「大したことない」
 口の中に広がる鉄錆の味を唾液と共に嚥下しながら、ヴォルファングは事も無げに言い返した。
 強がりなどではない。今の状態が分からないほど昂奮しているわけでも、無知なわけでもない。過去に、今の傷に勝る痛みを何度も受けているからこそできる客観的な評価だ。
(こんなモノ、アシェリーの攻撃に比べれば屁でもない)
 どうしても比較してしまう。アシェリー以外の相手と戦うのは久しぶりなのだから。
「いたぞ! こっちだ!」
 自分達を見つけた『満月』と『双月』が、進行方向に立ちふさがる。その数十人以上。
「どうする。一端戻るか?」
「いや……」
 王家騎士団『満月』と『双月』は基本的に荒野戦での戦いに優れている。彼らの陣形戦術から繰り出される連係プレイは、一人の力を何倍にも引き上げるだろう。だが、この狭い廊下では思うように身動きがとれない。全身鎧を着て大柄になっている兵士ならばなおさらだ。
「正面突破する! 騎士は引かぬわ!」
「もう何回も引いてるけどな」
 ガルシアのツッコミを無視して、ヴォルファングは紅地に金糸の織り込まれた絨毯を蹴った。
「ソイツに触られるな! ディヴァイドの扱いがハンパじゃないぞ!」
 兵士の一人が味方にした忠告に、ヴォルファングは苦笑する。
(ディヴァイド? 俺は元々正統剣技の使い手だぞ?)
 ヴォルファングにとってディヴァイドなど戦いのバリエーションを増やす道具に過ぎない。メインはあくまでも剣技。だが、相手が自分の手を怖がっているならソレを利用させて貰うだけだ。
 ヴォルファングは剣を握っていない左手を前に差し出し、盾のようにかざして突進した。すぐにその手を切り落とそうと、兵士の剣が飛んでくる。
 その動作を完全に読んでいたのか、出した手を引くと同時に入れ替わるようにして右の剣を力一杯突き出す。
「ちえぇぇぇすとおおおぉぉぉぉ!」
 鎧の胸部に掘られた鷲の紋章に吸い込まれた剣は、殆ど勢いを落とすことなく兵士の体を宙に浮かせて後ろに跳ね飛ばした。
 今の突きはアシェリーなら難なくかわしたモノだ。
(こんなモノか……)
 世界最強の軍事国家、ゼイレスグが誇る王家騎士団。いくら力が存分に発揮できない状況とはいえ、この手応えの無さはどうだ。
 一対一では話にならない。三体一でようやく良い勝負。それ以上の人数を集めないと、自分に傷を負わせることすらできない。
(こんな、モノだったのか……)
 身を低くして横からの剣閃をかわし、ロングソードの柄部で相手の顎を跳ね上げる。そのまま真上に引き上げた剣を兜割りに振り下ろし、兵士をあっけなく気絶させた。
(こんな弱い騎士団の入団試験を受けるために、俺はアシェリーを追いかけ回していたのか……)
 気を失った兵士を壁にして、後ろに控える兵士の死角となった位置から飛び出す。さらに壁を蹴り、三角飛びの要領で逆側に下り立つと、全く反応の追いついていない兵士の後頭部に剣を叩き付けた。
(俺は、いつの間に……コイツらより強くなったんだ?)
 まだまだ自分の方が格下だと思っていた。だが、城門で戦ってみてその考えは疑念へと変わった。そして今、確信が頭をもたげる。
 力、スピード、技。コイツらは全て置いてアシェリーより格下だ。
 かつて『深月』に所属していたというアシェリー。彼女に勝てば、王家騎士団と『同等』の力を身につけたことになると思っていた。しかしソレは違った。
(アイツに勝てなくても、コイツらには勝てる!)
 それはつまり、アシェリーの力が王家騎士団より遙かに勝ると言うことだ。どうやってそんな力を身につけたのかは知らないが、言い知れぬ昂揚感がヴォルファングの全身を包み込んだ。
 ヴォルファングがアシェリーを追う理由。それは自分への不甲斐なさや、アシェリーの力に対する嫉妬などではない。そんな下らない理由で動いていたのは、最初の数ヶ月ほどだ。ヴォルファングはすぐに別の魅力に取り憑かれてしまった。
(楽しかった、んだろうな……。女の尻を追いかけ回してるとかではなく、なんて言うか、上手く言えないが、アイツと戦ってるとスカっとするというか。恐らく、アイツが気持ちいいくらい強いからなんだろうが)
 ヴォルファングは剣術を本格的に習い始めて、たった一年で免許皆伝の腕前になったのだ。溢れんばかりの才気の持ち主だった。
 天才性。しかしソレは同時に毒も孕んでいる。もしアシェリーに出会わなければ、ヴォルファングはこれ以上剣の修行に時間を割こうとは思わなかっただろう。王家騎士団に入団できるレベルで満足していたはずだ。
(いつかアシェリーを倒す。ソコは変わらない。だが、何か最近アイツと戦ってられるだけでどこか満足している俺がいる)
 四年という時を経て、いつの間にか目的のための手段が、手段のための目的になってしまった。
 アシェリーと戦うこと。その結果がどうであれ、ヴォルファングはこの上ない充足感を得ることができた。戦う度に強くなる自分、更に強くなろうとする自分、そしてソレを上回る速度で強くなっていくアシェリー。
(ようやく分かった)
 コレまでも何度か、もしかしたらという思いはあった。だがハッキリ認識することはできなかった。
(俺はやはり、あいつのことが好きなんだろうな)


 リュアル=ロッドユール、百三十二歳。白き氷結の年、聡明なる老婆の日の生まれ。幼女体型の金の亡者は今、酷く呆れ返っていた。
(どこバカだヨ。真っ正面から突っ込むなんテ……)
 麻酔銃で裏口にいた衛兵を眠らせ、リュアルは足音を立てないように気を付けながらゼイレスグ城に忍び込んだ。
(ま、おかげでボクは動きやすくなってるんだけど)
 動きの邪魔にならないように、頭のてっぺんでお団子に纏めた緑とピンクの髪の毛を撫でながら、白い壁に背中を付けてゆっくり廊下を進む。
(アシェリー、こんな所で死ぬなんてボクがゆ・る・さ・ないよぉ〜)
 くふふ、と口元に悪戯っぽい笑みを浮かべ、曲がり角の向こうをそっと覗き見た。
 リュアルがゼイレスグ城に忍び込んだ理由。それはアシェリーを脱獄させること。
 二日前、三ヶ月ぶりに自分の家があるゼイレスグに戻って来たリュアルは、アシェリーが公開死刑になることを知った。アシェリーが死んでしまっては、貸したお金が一生戻ってこなくなる。出銭を回収しそびれてしまっては、金貸し業者の名が廃る。そんなことはリュアルの中に眠る商売人のプライドが許さない。
(こぉんなに都合よくハプニングが起きるなんテ。きっとボクの日頃の行いが良いせいだネ)
 角を曲がった先にある花瓶の置かれた台座に身を隠し、凄い形相で近くを走り抜けていく兵士をやり過ごす。誰もいなくなったことを確認し、天井に浮遊している監視用の宝玉を魔鋼銃で撃ち落とした。
 ゼイレスグ城は強固な魔導防衛システムを誇る。誰にも気付かれることなく入り込むのは極めて困難だ。どうしようかと城を観察しながら思案していた時、何をとち狂ったのか白昼堂々真っ正面から戦いを挑んだバカがいた。
 すぐに殺されるかと思っていたら、ちゃっかり城の中まで入り込んで良い具合に混乱させてくれている。この機会に便乗しない手はなかった。
(地下牢は、と……確かコッチだったはず)
左の窓から見える中庭に植えられた木の数、そして右の廊下に並んでいる扉の数を数え、リュアルは現在位置を頭に思い描く。
 ココは自分の知っている場所だ。過去に何度か通ったことがある。
 リュアルは非合法の金貸しだ。少しドジを踏めば、湿っぽい地下室の厄介になることもあった。貸す金が無くなり、自然廃業となった今となっては懐かしい思い出だが。
「おい貴様! 何をしている!」
 突然後ろから怒声を浴びせられる。恐る恐る振り向くと、全身鎧に身を包んだ兵士が槍をこちらに向けて構えていた。
 予想はしていたが、全員が全員侵入者の排除に当たっているわけではないらしい。それに中に入り込めただけでも幸運なのだ。アシェリーのいる場所まで見つからないなどと最初から考えてはいなかった。
「あ、ゴメンナサイ。ボク迷子になっちゃって。外に出るにはどうしたらいいの?」
「そうか! 貴様もアイツの仲間だな! クソ! アッチは囮か!」
 兵士はリュアルの言葉に耳を貸すことなく、いきなり槍を突き出す。
「うわっち! ちょ、ちょっとぉー! 危ないだろー!」
「死ね!」
 後ろに跳んで何とかかわすが、殺気立った兵士は間髪入れずに鋭い追撃を繰り出してくる。槍の届く距離から離れるだけで精一杯だ。
(三十六計逃げるが勝ちってネ!)
 まともに戦って勝てる相手ではない。だが逃げ足だけなら自信はある。三年前から、あの素早いアシェリーを追いかけ回していたのだ。
「待て!」
「って言われて待つバカはいないヨー!」
 やはりリュアルの脚力に着いていけないのか、兵士の姿も声もどんどん小さくなって行った。
「おいコッチだ! コッチにも侵入者がいるぞ!」
(あらら、こりゃあ一端出直しかなぁ……)
 肩越しに後ろを見ると、他の兵士が次々に集まってきている。しかも一人には顔を見られてしまった。次はもう少し念入りに作戦を立てる必要がある。
「もう一人いたのか! どこだ!?」
「あそこだ! あそこにいる背の低い『男』だ!」
 遠くの方で小さく、しかし確かに聞こえた声にリュアルの足が止まった。
「……男?」
 ぎぎぎ、とぎこちなく体を後ろに向け、両手に魔鋼銃を構える。視界の中で急速に大きくなっていく兵士達。大挙して押し寄せる白と緑の全身鎧にまるで臆することなく、リュアルは据わった目つきでトリガーを引いた。
 ガン! と低い音を立てて二本の魔鋼銃から勢いよく放たれた魔弾は、ソレをはじき返そうと構えた兵士の剣をかわして眉間に命中する。
「ワレコラ……今、何つった……」
 目元をヒクヒクと痙攣させ、リュアルは地獄の底から響くような呻き声を発した。
「怯むな! あの『小僧』を殺せ!」
「ワシは女じゃ、アンダラァー!」
 怒声を奇声に変え、リュアルは魔弾を乱射する。カートリッジ装填タイプのオートマチックだ。リボルバーと違い途中でエネルギーの授受は出来ないが、連射性に優れている。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇぇぇぇぇぇ!」
 一発一発に怨嗟の念がこもったエネルギーを乗せ、死神の鎌を持つディヴァイドと化した魔弾は、トリッキーな動きをしながら兵士達の眉間に吸い込まれていった。
「とっとと、おーじょーせいやー! このボケカスドグソ共があぁぁぁぁ!」
 だがさすがは王家騎士団と言ったところか。動きは大分遅くなったものの、前進することを止めない。
「オモロイやないか! 元気あるんはええこっちゃ!」
 コンマ数秒であらかじめエネルギーを込めておいた魔弾カートリッジを詰め直し、リュアルは哄笑を上げながら底冷えするような視線で獲物を射抜いた。その形相、般若の如し。
「けどなぁ、突進だけやったらゴキブリでもできる。芸がないわ。ちったぁかわすなり、はじくなりしてみんかい!」
 鎧に撃ち込んだ無数の弾を遠隔操作で浮かび上がらせ、鎧と鎧の間で跳弾させる。突然自分達の周りで生じた魔弾の弾幕に、兵士達の中から情けない声が上がり始めた。いくら全身鎧に包まれているといえ隙間はある。下手な鉄砲でも撃っていれば、いつかはソコに入り込む。その恐怖を一人が感じれば、全員に伝播するのはあっという間だった。
「それ貸し足るわ。しっかり芸磨いとけや」
 内面を消したような硬質的な表情で言い残すと、リュアルは地下牢に向かった。


 別に魔鋼銃の扱いに自信があったわけではなかった。だいたいコレを武器に選んだ理由も、見た目がカッコ良かったからという安直なモノだ。持っていれば満足できたし、銃の練習などしようとも思わなかった。
 だが目標ができて考え方がガラリと変わった。
 アシェリーに当てたい。
 タダそれだけを念じてトリガーを引き続けた。だが一発も当たらなかった。ディヴァイドを駆使して軌道を読めなくしているはずなのに、何故か当たらない。常に一歩先を行かれてしまう。
 ――きっと自分の腕が悪いのだ。才能が無いに違いない。
 当たり前のようにそう思っていた。
 しかし、ここの兵士達は違った。面白いように当たる。相手がどれだけ素早い動きをしていようと予測できる。急所を外す方が難しいくらいだ。ディヴァイドなど使う必要すらない。アシェリーの動きに比べれば止まって見えた。
(仮にも王家騎士団なのにねぇ……)
 また一人、魔弾で後頭部を強打された兵士が目の前で沈んでいく。鎧の色は緑。王家騎士団『双月』だ。彼は魔導で自分の動きを早めていたはずなのに、それでもリュアルの弾をかわしきれなかった。
(コレなら別にコソコソする必要もなかったかナ)
 自分はコイツらより強い。数で来られても各個撃破していけば十分倒しうる。その自信がリュアルの中に生まれていた。アシェリーとの戦いに慣れすぎたリュアルにとって、王家騎士団は単なる的でしかなくなっていた。
(アシェリーって……実は凄かったんだ……)
 地下牢へと続く階段を下りながら、今更ながらにそう思う。
 最初に見た時から変な奴だとは思っていた。


『アンタが持ってる資金、全部貸してくれないかい? 三日後に倍にして返すからさ』


 リュアルの店に来たアシェリーが最初に言った言葉。怪しいどころの話ではない。運営資金が無くなってしまっては他で商売ができなくなる。事実上廃業だ。それに貸したらまず返ってこないと確信した。
 だが、貸してしまった。
 普通、大金を借りに来た人間は何かしらの理由を説明する。ソレが嘘であれ本当であれ。アシェリーは最初からソレを放棄していた。何も飾らないストレートな言葉。それに毒されたというのは愚にも付かない言い訳だろう。
 今思えばあの時から魅せられていたのだ。アシェリーの持つ美貌と独特の雰囲気に。
 リュアルの直感はコレまで一度たりとも間違ったことはない。貸しても返ってこないだろう。だがそれでも貸すべきだ。
 この矛盾した思いの謎は、一週間後に氷解した。その時はすでにアシェリーを追ってゼイレスグを出た後だった。
 非合法組織の一斉摘発。
 人身売買や麻薬取引といったゼイレスグの法に抵触することを行っている者達が皆、一生臭い飯を食べ続けるハメになった。
 ゼイレスグでは少しくらいの非合法も看過される。全国的にはそんな噂が流されていた。だからこそリュアルもゼイレスグで金貸しを営むことにしたのだ。だがそれはあくまでも犯罪者を油断させ、証拠を掴むための演技に過ぎなかった。
 摘発者リストの中には当然リュアルの名前も含まれていただろう。しかしリュアルは一週間前に廃業した。そしてゼイレスグにはいない。
 まさに首の皮一枚で繋がったのだ。
 大金を失ってしまったが、それ以上に大きなモノを得た。
 自由と生きる目標。
(くふふ、今助けてあげるからネ。ア・シェ・リー)
 正直、もうお金など返して貰わなくても良くなっていた。生活するのに必要な分は、正規の金融機関に開いたリュアルの口座に、足長おじさんから振り込まれている。そして振り込まれ始めたのはリュアルが廃業した直後。足長おじさんの正体はアシェリー以外に考えられなかった。
 偶然ではなかったのだ。アシェリーは最初からリュアルを助けるつもりでお金を借りていった。
 元王家騎士団だったアシェリーはいずれ一斉摘発があることを知っていた。だがそのことを喋り、情報が広がってしまっては本当に裁かれるべき悪も逃してしまうことになりかねない。だからこんな回りくどい方法を取った。
 恐らくリュアルの見た目が子供だったせいで、何か複雑な事情があると勘違いしたのだろう。それで助けてくれた。
(アシェリー……)
 お金を返して貰うためにアシェリーを追いかけ回しているというのは、自分の行動を簡単に納得するための建前に過ぎない。そんな下らない理由で、命を張ってまでゼイレスグ城に忍び込もうなどとは思わない。
 リュアルにとってアシェリーはまさしく生きるための目標だ。
(必ず、キミのハートをゲットするからネー)
 愛おしい人を追って世界中を旅行する。これ以上充実した生活は他にないだろう。
 魔導の明かりによって僅かに照らされただけの薄暗い階段が、華やかに彩られたウェディングロードのように見えた。




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