誰が為に冥霊は吼える

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 朝方は見事な蒼穹だったのに、昼過ぎにはどんよりと分厚い雲が天を覆い始め、日が沈む頃には完全な曇り空となっていた。
 だが図書館で嘉木堂の寝顔を拝めた私にとって、ソレはほんの些細な事でしかなかった。周りに誰も人がいなければ、私は理性を保つことすら出来なかったかもしれない。それほど純真で無垢な寝顔だった。
「疲れているのか、嘉木堂」
 夜の九時過ぎ。図書館の閉館時間まで眠っていた嘉木堂を起こして、私達は研究室へ戻る道を歩いていた。
 この辺りは街灯すらない。両脇に広がる放置されたままの雑木林が、濃い闇を生みだして不気味にざわめいている。
 雲で隠れて月明かりすらアテに出来ない真っ暗な夜道を、私達は遠くに見える研究室の明かりを頼りに帰路をたどっていた。
「起こしてくれれば良かったのに」
 そんなこと勿体なくて出来るか。
 眠そうに目を擦りながら不満を漏らす嘉木堂を見ながら、私は密かにほくそ笑んだ。
「おや、随分と珍しい組み合わせだな」
 と、不意に前から声を掛けられた。私と嘉木堂は同時にそちらを向く。
 大分暗闇に目が慣れてきているとはいえ、はっきり声の主が見えたわけではない。しかし低くシブめ声と、くわえタバコの仄かな明かりで浮かび上がった顎髭で、すぐに誰だか分かった。
「先生。どうしたんですか?」
 それは私達の研究室の教授だった。卒論発表も無事終わり、しばらく姿を見なかったのでてっきり家族旅行にでも出かけたのかと思っていた。
「いやぁ、ちょっと夜風にでも当たろうかと思ってな」
 紫煙をくゆらせながら、オールバックにした薄い髪の毛を上から撫でる。
「それにしても嘉木堂。しばらく見ない間に頼もしくなったじゃないか。この前の飲み会で真っ先に逃げ出したヤツとは思えんよ」
 隣にいる嘉木堂を見ながら、教授は茶化した。
 私が何かを返そうとした時、嘉木堂がまるで庇うように前に出る。
「やっぱりアンタだったのか。藍原さんから話を聞いてまさかとは思っていたんだ」
 声には剣呑な響きが込められていた。嘉木堂は明らかに教授に対して敵意を持っている。
「飲み会に参加していないアンタが、僕がいなくなったと聞いてどうしてすぐに『逃げた』と考えるんだ」
 ――あ。

《それじゃ、お願いします。あと嘉木堂を見かけませんでしたか?》
《いや、見なかったが。もう逃げ帰ったんじゃないのか?》

 耳の奥で再現されたその時のやり取りに、私は違和感を覚えた。
 確かにおかしい。現場に居合わせていなかったはずの教授が、嘉木堂がいないと聞いてすぐに『逃げ帰った』という発想に至るには無理がある。
 普通、自分の教え子が危険な場所に取り残されている事をまず心配するべきなんじゃないのか。なのに他の生徒に話を聞くこともなく、いきなり諦めたように結論付けるのは不自然だ。
 それにさっき言っていたじゃないか。
 ――『”真っ先に”逃げ出したヤツ』と。
 私は嘉木堂が『居なくなった』としか言っていない。『”一番最初に”居なくなった』とは言っていないのだ。
 つまり教授は知っていた。
 嘉木堂が事件の直後に店を出たことを。
 ソレが意味するところは――。
「なかなか聡いな、嘉木堂。お前がそんな目をするところを見るのはコレで二度目だ。あの時は驚いたよ。まさかお前まで冥霊使いだとは知らなかったものでな」
 そして、空気の密度が変わった。
 さっきまで夜を演出するパーツの一つでしかなかった闇が、まるで意思を持ったかのよう体にまとわりつき、粘り気のある質感を伴って蠢き始める。
 底の見えない深淵を覗き込んだ時に感じる本能的な寒気と、体の内面に直接舌を這わされたような怖気。
 数分前まではごく普通だった黒の帳が、まったく異質な物へと変貌した。
「お前の媒介体は『鏡』だな。この前確認させて貰った。そして鏡は光のない場所では効果を発揮しない」
 吐き捨てたタバコを足でもみ消し、新しく取り出した一本にライターで火を着ける。
 その火が風とは違う物で揺らめいたと思った次の瞬間、長くしなる鞭が甲高い声を上げて生み出された。ソレは曲線的な軌道を描いて嘉木堂を下から狙い打つ。
「逃げろ!」
 私を大きく突き飛ばし、嘉木堂はその反動で逆側に跳んだ。さっきまで二人が重なっていた場所を、正確な指向性で鞭が通り過ぎて行く。
「そうはいかん。せっかくの『鬼』と『戦姫(いくさひめ)』の冥霊だ。どちらも喰らわせて貰う」
 今何と言った? 喰らう? 私の冥霊を喰らうと言ったのか?
 いきなり始まった戦闘に、まったく思考が付いていかない。
 私の教授が敵で、敵は冥霊使いで、冥霊使いが冥霊を喰らう……どうなるんだ、いったい。
「せっかく『戦姫』を喰らうために君を俺の研究室に呼んだのに、なかなか覚醒しないから面倒な荒療治をしなければならなくなったが……『鬼』のオマケ付きとは思わぬ収穫だ」
 破裂したライターを投げ捨て、教授は火のついたタバコをコチラに向けてきた。
 暗闇に浮かび上がった紅く妖しい一点から、針のように細い何かが私めがけて放たれる。
「え――」
 しかし体は動かない。
 吸い込まれるように針が私の胸に接近し、
「くそ!」
 体内に入り込む直前で、『指』によって阻まれた。
 それは以前見た巨大な『腕』の『指』だった。浅黒く節くれ立った指の先には、鮮血を思わせる緋色の爪が鋭く伸びていた。根元をたどって見ると、嘉木堂がコンパクトにペンライトを当てている。そのコンパクトを破壊して『指』が生えていた。『指』はすぐに輪郭がぼやけ、白い鞭同様、風に熔け込むようにして消える。
「やれやれ、藍原の方はまだ自由に冥霊を喚び出せないのか。それでは喰えんな。やはり嘉木堂の『鬼』が先か」
 今、教授は私を殺そうとしていた。
 そして嘉木堂がいなければ私は確実に死んでいた。
 当たり前だった日常。大切だった日常。それが今、無惨に踏みにじられ蹂躙されていく。
「炎……ソレがお前の媒介体か!」
「さぁな」
 嘉木堂が新しいコンパクトを取り出し、教授に向かって走る。
 その光景をどこか遠い世界での他人事のように見ながら、私は自分が踏み入れた世界の異常さを改めて感じていた。
「しかしお前が『鬼』の保持者とはな。まったく気付かなかったよ」
「隠れてコソコソするのは得意でね」
 教授が胸ポケットから取り出したライターに炎が灯る。そこから伸びだ白い鞭が地面を擦り、下から嘉木堂に狙いを定めた。嘉木堂は身を捻って直撃をかわすが、僅かに腕を掠めている。抉られたであろう箇所を抑えながらも、嘉木堂はさらに教授との間合いを詰めた。
「『鬼』の射程距離は短かそうだな。せいぜい三メートルと言ったところか」
 しかし教授は相変わらず余裕の笑みを浮かべて悠然と構えている。
 ――余裕の笑み?
 そこで初めて自分の見ている光景がおかしいことに気付いた。
 辺りは月明かり一つない真っ暗な闇だ。遠く離れている教授の顔など見えるはずがない。
 普通ならば。
「嘉木堂、お前では俺に勝てんよ。年期が違う」
 狡猾そうに口の端をつり上げた仕草さえハッキリ見える。
 コレが意味するところはつまり――私も普通ではなくなりつつあると言うことだ。
 飲み会の時には全く見えなかった嘉木堂や教授の冥霊が今は細部まで分かるのも、尋常ならざる白い鞭のスピードに目がついて行けているのも、深い闇を見通せるのもすべて、私が冥霊使いとして資質に目覚めつつある証拠だ。
 それ以外考えられない。
「その自惚れが命取りだ」
 伏せ目がちで所在なさげだった嘉木堂の表情は、今や自信に満ちあふれ、好戦的な鋭い瞳で教授を射抜いている。
 飲み会で初めて見た顔と全く同じだ。
 冥霊を使うとこうなってしまうのだろうか。
「『鬼』の力を舐めるなよ」
 嘉木堂が五個のコンパクトを一気に宙に舞わせる。ペンライトの光を一つ一つ丁寧に当てていき、僅かな時間差を生んで喚び出した五本の『指』が巨大な顎のように口を開けた。
「これは喰いでがありそうだ」
 いやらしい笑みを浮かべて舌なめずりしながら、教授は火のついた大きめのライターを足下に叩き付ける。ライターオイルが辺りに飛び散り、それに火が移ってコレまでよりも遙かに巨大な炎が現出した。
 直後、炎から数本の白い鞭が高速で立ち上り、盾となって『指』の侵攻を阻む。
「くそっ!」
 太い鞭に攻撃を受け止められた『指』は力負けしたかのように消えた。その隙を逃すことなく鞭は反動をつけてしなり、地面すれすれの低い軌道からすくい上げるように嘉木堂の体を狙う。
 一端後ろに跳んだ後、左に大きく転がってかわす嘉木堂。しかしズボンに血が滲む。
「ククク……楽しいなぁ、嘉木堂。これから『鬼』を喰えるかと思うと、年甲斐もなく昂奮してきたよ」
 双眸に狂気的な光を宿らせ、教授は冷笑を浮かべた。
 教授はまだ本気を出していない。なのに力が違いすぎる。
 ――いや、そうじゃない。今の状況が嘉木堂にとって圧倒的に不利なだけだ。
 分厚い雲で覆われ、月明かりすらささない暗闇。鏡の代わりになりそうな物は何一つ無い。
 教授はこの日を待っていたんだ。嘉木堂の力を最小限に抑えられる絶好の機会を。
「鏡とペンライトを常備していたのは感心だが……無限に出せるわけではない。いつまで抵抗できるかな」
「それはお前も同じだろ」
「どうかな」
 まるで勝利を確信したような不遜な顔つき。
 このままでは嘉木堂は勝てない。嘉木堂が死んでしまう。 
 嫌だ。いやだイヤだ嫌だ!
 せっかく嘉木堂と沢山話せるようになったのに。聞き事が、知って欲しい事が、まだ一杯残ってるのに!
 教授がライターを構える。そして火をつけようとした時、私の中で何かが吼えた。
 体の最深から沸き上がる猛獣の雄叫び。膨大なエネルギーを帯びたマグマの如き灼熱は、私の内面に埋め込まれた鎖を断ち切って縦横無尽に荒れ狂う。
「やめろ!」
 力の塊は叫び声に乗り、あらゆる鬱屈を一気に払拭するような狂喜に包まれて吐き出された。
「な……」
 突然自分の手で破裂したライターを信じられないと言った顔つきで見つめながら、教授は私の方に視線を向ける。
「嘉木堂は私の大切な人なんだ!」
 決壊した激情が奔流となって荒れ狂い、教授の体を包み込んだ。私の高ぶった感情に呼応して、教授の隠し持ったライターが連鎖的に破壊されていく。
 私もやるしかないんだ。恐いなんて間の抜けたこと言ってられない。嘉木堂を失うくらいなら、しばらく冥霊の力に身を任せてこの狂った世界に浸った方がずっとましだ。
「コレが『戦姫』の力か。ふむ……コレまでの経緯からすると媒介体は『液体』といったところかな」

《ただ気になってる事があってね。昨日、割れたグラスの数が僕が媒介体として使った物より多いんだ》

 今ならハッキリと分かる。最初、飲み会でグラスの一部を壊したのは私だ。危険を感じて無意識に冥霊、『戦姫』を喚んだんだ。

《さっきジュースが弾けたろ? それから攻撃が始まった》

 敵の攻撃だと思っていた。けど違う。精神状態が不安定になって『戦姫』が暴走した。それがキッカケで『戦姫』との繋がりが強くなった。だから冥霊が見えるようになった。
「ようやく冥霊を自在に喚べるようになったか。覚醒おめでとう、と言いたいところだがサヨナラだ」
 おかしい。ライターオイルを媒介体としてライターは全て壊したはずだ。そのせいで教授のスーツはオイルまみれ。下手に炎を生み出せば自分の体を焼きかねない。
 なのに何だ。教授の自信に満ちた態度は。
「藍原、残念だったな。もう少し早くこうしていれば、あるいは……」
 溜息混じりに呟いた教授の言葉が終わるか終わらないかの内に、アスファルトを突き破って白い鞭が地面から生える。
「な――」
 突然、嘉木堂の眼前に現れた鞭は空気を引き裂いて左腕に狙いを付けた。完全に不意を付かれた嘉木堂は全く反応できないまま腕を絡め取られる。そして朽ち木が折れるような、低く籠もった音が闇夜に響いた。
「ぐ……あ……ッ!」
 白い鞭が空気に熔け、戒めが無くなると同時に嘉木堂は大きく後ろに跳んだ。そして巻き付かれた箇所を右腕で押さえ、苦しそうに顔をしかめる。
「嘉木堂!」
 折れた。
 今、嘉木堂の左腕がアッサリ折られた。
 私は泣きそうになるのを必死に我慢して嘉木堂のそばに駆け寄る。しかし、その間に白い鞭が地面から生えて行く手を阻んだ。
「藍原は大人しく見物してろ。それに覚醒したばかりのお前では嘉木堂の足手まといにしかならない」
 関係ない。そんなこと関係ない!
 嘉木堂に守られてばかりは嫌だ! 私が嘉木堂を守る! これ以上私の大切な嘉木堂を傷つけられてたまるか!
「藍原さん……来るんじゃない」
 鞭を避けて嘉木堂の元に行こうとした私を、彼は掠れた声で止めた。そしてコチラを見て少し笑う。額には激痛から来る脂汗が滲んでいた。
「でも嘉木堂!」
「心配ない。ようやくコイツの媒介体が分かった」
 私から視線を外し、嘉木堂は教授を睨み付けながら不敵な笑みを浮かべる。
 媒介体? そうだ。さっき鞭が飛びしたアスファルトに火はなかった。なら教授の媒介体は……。
「『熱』さ。コイツは『熱』を介して冥霊を喚び出してる」
「ほぅ」
 嘉木堂の答えに、教授は面白い物でも見るかのように目を細めて腕組みする。
 『熱』……? そう言えば、最初に私達が中庭で襲われたとき、白い触手が生えたのは『故障して明かりが灯ったままの街灯』、『運転中の噴水のモーター』、『火のついたタバコ』、『エンジンをかけたままの車のボンネット』。
 どれも『熱』を持った物ばかりだ。
 だったらさっきのアスファルトは……。
「摩擦熱!」
 ライターから喚びだした白い鞭はどれも低い位置から攻撃を仕掛けていた。その時に地面を激しく擦っていたのだ。教授はそこから冥霊を喚びだした。
「二人ともなかなか頭がいいな。ご明察だよ。だがソレが分かったところで状況は変わらない」
 教授は感心したように二、三度頷き、パチンと指を鳴らす。
 そのコミカルな音に応じて五本もの白い鞭が現出した。それらは触手のように不確定な軌道で蠢き、バラバラの角度から嘉木堂を襲う。
「嘉木堂!」
「来るなと言っただろう!」
 前傾し、走りかけた私の体を嘉木堂の怒声が止めた。
 嘉木堂は左腕を庇いながらも、信じられない足さばきと上体の柔軟性で、白い触手を綺麗にかわしていく。
「今までの動きは様子見、か……。その余裕、気に入らない」
 嘉木堂に避けきられ、彼の後ろで消え去った触手を忌々しげに見ながら、教授は舌打ちした。直後、更に数を増した触手が嘉木堂の背後から急迫する。
 ダメだ……。
 教授は喚び出した白い鞭で地面を摩擦し、そこからさらに新しい鞭を喚び出せる。つまり連鎖的な攻撃が可能なのだ。
 鏡とライトを使って単発でしか攻撃できない嘉木堂とは、攻撃量に雲泥の差がある。
「どうした! 嘉木堂! 弱いクセに生意気な余裕を見せるからこんな事になる!」
 七本から十本。十本から十五本へ。
 加速度的に増していく触手からの猛攻に嘉木堂は避けるだけで精一杯だった。そして嘉木堂が触手を足場代わりに空中で体を入れ替え、下から伸び上がってくる攻撃をやり過ごした時、その触手の影からもう一本別の触手が現れる。
「くっ!」
 体を捻って直撃はかわすが、宙で不自然な動きをしたためにバランスを大きく崩した。その隙を狙い、触手の一本が嘉木堂の右腕を捕らえる。
「嘉木……!」
 私が彼の名前を叫ぶ前に、もう二度と聞きたくないと思っていた鈍い音が発せられた。
「く、うぅ、あ……あ……ッ」
 着地と同時にうずくまった嘉木堂は両腕をダラリと下げ、歯を食いしばって必死に痛みに耐えている。あまりの痛々しさに、気が付けば私の頬は涙で濡れていた。
 代わってやりたい。出来ることなら私が嘉木堂の代わりに……。
 けど、ソレすら出来ない。嘉木堂の為に力を振るうことさえ出来ない。
 せっかく覚醒しても自由に力を使えなければ意味がない! 何か、何かないのか! 私の媒介体は『液体』なのだろう! どうやって『戦姫』を使えばいい! どうすれば嘉木堂を救える!
「嘉木堂。お前は強い男だ。お前ほどの使い手なら、私に冥霊を喰われて生き延びるくらいなら死を選ぶだろう。けどな……」
 教授の顔がこちらに向けられた。あまりに冷たい視線に体温が一気に下がったような錯覚に陥る。
「藍原を守るためなら、お前は躊躇うことなく『鬼』を出すだろう。違うか?」
 あまりに絶望的な悪寒が脳天を突いた。
 教授が私を生かして置いた理由は『戦姫』を喰うためだけじゃない。嘉木堂に無防備な『鬼』を出させるためでもあった。
 安全に『鬼』を喰らうために。
 私は完全に嘉木堂の足かせになっている。きっと私がいるから嘉木堂は思うように戦えないんだ。私がいなければ、私がいなければ嘉木堂はきっと勝てる……!
「さぁ嘉木堂。今から私は藍原を半殺しにする。覚醒したばかりの藍原ならそれだけで『戦姫』を出すだろう。自分の涙でも媒介体にしてな。けどそうすればどうなる? 藍原の顔は二目と見れなくなり、『戦姫』は俺の冥霊の腹に収まる」
 顔を醜く歪め、教授は悠然と嘉木堂のそばに歩み寄った。
「さすがにそれは困るだろう。だから優しい優しい俺がチャンスをやる。これからお前の大好きな鏡を藍原に向けて置いてやるよ。光は一瞬だけ俺がこのペンライトで作りだしてやる」
 言いながら、両腕を全く動かせない嘉木堂の胸ポケットからペンライトを抜き取る。
「いいか、よく見ておけよ。でないと死ぬぞ?」
「お前がな」
 さっきまで俯いていた嘉木堂が早い動きで顔を上げた。そして左目から血の色に染まった『鬼』の『爪』が生み出される。爪は一直線に伸びて教授の眉間を貫くと、鮮血をまき散らせて消えた。
「僕が鏡を出せなくなれば、きっとそばに来ると思っていたよ。バカ面下げてな」
 足の力だけで立ち上がり、嘉木堂は仰向けに倒れ込んだ教授を無慈悲に睥睨する。
 嘉木堂の左目があった場所には、暗い眼窩がポッカリと口を開けていた。だがそれだけで出血はない。
「嘉木堂!」
 私は自分でも驚くくらいの大声を上げて嘉木堂の元に駆け寄った。そして折れた両腕に触れないように気をつけながら彼の体を支える。
「大丈夫か!? 大丈夫なわけないな! でも大丈夫だ! 私がすぐに病院に連れてってやるからな! 腕もすぐ治る! 目もくっつく!」
 自分でも何を言っているのかよく分からない。
 だが勝った。立っているのは嘉木堂だ。嘉木堂が勝った。嘉木堂が――
 頭の中で連呼される自分の言葉に、私は喜び以外の得体の知れない恐怖を感じた。そして倒れてピクリともしない教授の方に緩慢な動きで目を向ける。
「死んで、いるのか……?」
「多分」
 しかし、私達が見ている前で教授の体がゆっくりと起きあがり始めた。
「藍原さん! ペンライトと鏡の代わりになる物を! 早く!」
「わ、分かった!」
 鏡はすぐに見つからないがペンライトは教授がさっき落とした物がある。とりあえずソレを拾って――
「まさか、眼を『鏡』として使うとはな……」
 教授と目が会う。
 それだけで私は動けなくなった。
「血が出てないな。義眼か? 本物はすでに使ってしまったのか?」
 明らかに人間の眼ではなかった。
 瞳孔は異常に小さく萎縮し、眦(まなじり)が割けんばかりに大きく見開かれた双眸には睨まれただけでショック死しそうな程の殺意が込められていた。
「光は……。そうか、摩擦熱を利用したのか。なかなかキレるじゃないか」
 言いながら教授はペンライトを踏みつぶし、大きく後ろに跳んで体を闇の中に溶け込ませる。
 確かに、熱を帯びたアスファルトは仄かな光を放っていた。だが一つ一つは弱い。嘉木堂は少しでも光を強くするために白い触手の猛攻を避け続け、絶好の機会を待った。
「だがライトよりは弱かったな。おかげで命拾いしたよ。貴様に近づくのは自殺行為だということも学習できた」
 教授は完全に夜に紛れ込み、もう私の目でも姿を捕らえることは出来なくなった。
「『鬼』を喰うのは諦めよう。嘉木堂、貴様は危険だ。確実に殺す」
 遠くの方から声が聞こえたと思った次の瞬間、白い鞭が間欠泉のように吹き出す。それはさっきまでの低い軌道ではなく、高い位置から私達に叩き付けられた。
「後ろに跳んで!」
 切羽詰まった嘉木堂の声に私は反射的に地面を蹴る。直後、暴風と轟音を上げて目の前に白い柱が出来た。こんな物に押し潰されたらひとたまりもない。
「嘉木堂!」
 悲鳴混じりの声を上げ、私は白い柱の向こうにいるはずの嘉木堂を探した。
 嘉木堂は。嘉木堂はどうなった。私だけが助かっても意味がない。嘉木堂が生きていないと……!
「さすがだな嘉木堂! 両腕が折れているというのにその動き。尊敬に値するよ!」
 普段聞いたことのない教授の哄笑が高々と響く。
 嘉木堂は動くたびに走るであろう激痛に耐えながらも、白い触手の連撃をかわしきっていた。苦悶に顔を歪めながらも目だけは鋭く光らせ、教授の位置を探り続けている。
 嘉木堂はまだ諦めていない。僅かな勝機を必死に見い出そうとしている。
 なら私に出来ることは何だ。私は今の嘉木堂のために何が出来る。
 嘉木堂のように素早い動きは出来ない。『戦姫』も思ったように喚び出せない。喚び出せたとしても『液体』が無い。
 違う。そうじゃない。私じゃ教授に勝てない。なら鏡と光だ。鏡と光を……。
「え……」
 何か異様な熱を感じて私は顔を上げた。
 宙に玉が浮いている。うっすらと紅く光る玉が。まるで、さっきの熱を持ったアスファルトが浮かんでいるような……。
 まさか――
「嘉木堂! 上から来るぞ!」
 頭の中で考えが纏まる前に私は叫んでいた。その声に触発されたように、宙の紅い玉から白く太い管が生み出される。
 それは『白い蛇』の頭だった。これまでの鞭や触手よりも遙かに大きい。
 恐らくコレが教授の冥霊の正体。今までは媒介体となる熱源が小さかったために一部しか喚び出せなかった。
 しかし、空気を激しく摩擦して生じさせた大きな熱源ならば全体を喚ぶことが出来る。高い位置からの攻撃はこのためだった。
「な――」
 驚愕に目を見開いた嘉木堂の体が一瞬硬直する。そしてその一瞬が致命的だった。
 上顎と下顎が一直線になるまでに大きく開けられた口は、膨大な質量を伴って嘉木堂の体に迫る。
「くそっ!」
 凶悪な蛇の牙から逃れようと嘉木堂は上体を反らせ、体を沈ませた。さっきまで獲物のいた位置で閉じられつつある蛇の口。上顎に埋め込まれた死神の刃が空を切り、地面に呑み込まれるようにして姿を消す。
 かわしきった。
 私が安堵と共にそう思った直後、嘉木堂の胸板から噴水のように何かが飛散する。
 嘉木堂の体は重力に引かれて崩れ落ち、仰向けの体勢で倒れ込んだ。そして嘉木堂の体の下で、何か黒い染みがジワジワと面積を広げていく。
 嘉木堂はピクリとも動かない。
「死んだか」
 闇の中からした教授の声が、耳障りなノイズのように聞こえた。
 死んだ? 嘉木堂が死んだ? 何を言ってるんだコイツは。そんな馬鹿なことが起きるわけないじゃないか。
 私はおぼつかない足取りで、フラフラと嘉木堂の元に歩み寄る。
「さあ、藍原。『液体』は用意してやったぞ。『戦姫』を喚び出すんだ」
 液体? 何を言ってるんだ。
「せっかく嘉木堂に守って貰った命だ。何もしないまま死んでしまったら嘉木堂も浮かばれないぞ。違うか?」
 諭すような声。私の視界にある闇の一部がせり出し、徐々に人間の形を取っていく。黒い海から這い出るように、教授は私の前に姿を現した。
 嘉木堂が浮かばれない? だからさっきから何を言っているのか全く分からない。
「藍原、何て顔してるんだ。美人が台無しじゃないか」
 教授は嘉木堂の側で座り込む私を見下ろしながら、おどけたように肩をすくめて見せた。
 眉間にあった傷口にはハンカチが巻かれ、額に赤黒い残滓をこびり付かせている。出血はもう止まっているようだった。
「嘉木堂は死んだ。私が殺したんだ。憎いだろう? 私を殺したいだろう? なら『戦姫』を喚び出せ。嘉木堂の血を媒介体として」
 血を媒介体にする? 
 そういえば嘉木堂が言っていた。
 媒介体は自分の意思を通わせられる『物』でなければならない。だから他人の体の一部を媒介体にすることは出来ない。
 しかし嘉木堂から流れ出た血、コレにはすでに嘉木堂の意思は通っていない。単なる『物』だ。
 朦朧とする意識の中で、嘉木堂と楽しくお喋りしていた光景の欠片が思い出される。
「藍原ぁ。喚び出せないなら、嘉木堂の死体をさらに切り刻むしかないなぁ。『戦姫』を出させるためなら俺はあらゆる努力を惜しまんよ」
 教授の顔が歪んだ悦楽に染まる。
 嘉木堂の死体? 何だソレは。そんな物どこにある。
「さぁ――」
 教授が何か言おうと口を開き掛けた時、私のすぐ横を巨大な何かが通り過ぎた。
 ソレは空を裂き、鋭い爪で教授の喉笛を狙う。しかし素早く身を引いた教授の左腕を掠め、『腕』は空気に熔けて姿を消した。
「キ、サマ! まだそんな力が!」
 掠めただけだった。確かに掠めただけだったが、教授の左腕からはおびただしい量の血が流れ出ている。
「嘉木堂……?」
 恐る恐る後ろを見る。
 嘉木堂は自分の血に身を沈めながらも、顔だけを上げて教授を睨み付けていた。嘉木堂の側のアスファルトが大きく抉れている。
 嘉木堂は自分の血を鏡代わりにして『鬼』の『腕』を喚び出したのだ。まだ地面に僅かに残る摩擦熱を光源として。
「藍原……さん。逃げろ……」
 消え去りそうな弱々しい声。そこに教授の嘲笑が重なった。
「人の心配をする余裕があるなら自分の事を考えたらどうだ!」
 嘉木堂の後ろから白い鞭が迫る。嘉木堂に避ける力は残っていない。
 ――ダメだ。
 鞭の先が嘉木堂の心臓に狙いを定めた。
 ――ダメだダメだダメだ。
 嘉木堂に何か策がある訳でもない。ただ動けずに死の瞬間を待っている。
 ――ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!
 嘉木堂が、死ぬ。
『やめろおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
 私の声に重なって何かが吼えた。
 ライターを壊した時とは比べ物にならない程、極限まで研ぎ澄まされた感覚。破壊衝動さえ伴う圧倒的なディーテイル。母胎の羊水につかっているような安心感と、命綱も無しに絶壁に立たされたような恐怖感が同時に襲ってくる。
「があぁぁぁぁぁぁ!」
 教授の叫声に混じって急激に液体が蒸発したような音が轟き、血にまみれた教授の左腕から何かが生まれた。
 ソレは剣だった。
 柄部に金の装飾が施された剣が白い細腕に握られて伸び、続けて透明感のある羽衣を纏った美しい女性が姿を露わにする。
 腰まで長く伸びた銀髪、魅惑的な朱色の瞳。肌は陶磁器のように白くなめらかで、彫刻のように整ったボティーラインを誇っていた。
 私は殆ど直感的に理解する。
 これが私の冥霊、『戦姫』だと。
 『戦姫』は教授の左腕から離れて嘉木堂の場所まで跳躍すると、剣で白い鞭を弾く。そして空気に熔けて消えそうになったソレを、剣を持っていない方の手で掴んだ。
「ま、まさか……やめろ……」
 震えた教授の声が耳に届く。
 『戦姫』は無表情のまま氷のように冷たい視線で白い鞭を一瞥し、掴む手に力を込めた。
「クソッタレ!」
 教授の罵声と共に白い触手が地面から鎌首をもたげる。しかしそれらは『戦姫』に到達する前に勢いを落とし、力無くアスファルトに横たわって消えた。
「あ……あ……」
 教授の膝が折れる。
 私が何をしたわけでもないのに顔は青ざめ、滝のような汗を掻いていた。両手を地面について体を支え、生まれたての仔馬のように全身を震わせる。
「俺の、冥霊が……こんなガキに、喰……」
 掠れた声で紡ぐ言葉は途中で聞こえなくなり、教授は白目を剥いて倒れこんだ。
 気絶、した……?
 でも何故? 私は何もしていない。嘉木堂もだ。『戦姫』は白い蛇を掴んでいただけ。その『戦姫』も今は消えてしまっている。
「藍原、さん……凄い、ね……」
 下からの嘉木堂の声で私はようやく我に返った。
 そうだ! 今は分からない事なんてどうでも良い! 早く嘉木堂を病院に!
 私は携帯を取り出し、震える指先でボタンを押した。

 都内にある総合病院の五階。
 『嘉木堂 翔』と書かれたネームプレートを確認して、私は個室の扉を開けた。今日、ようやく嘉木堂が一般病棟に移され、面会が可能になっのだ。
 白いシーツの敷かれたパイプベッドに上半身だけ起こし、嘉木堂はニッコリと元気そうに笑って私を迎えてくれた。
「やぁ、藍原さん。何だか久しぶりだね」
 病院服の胸元から見える包帯と、両腕にはめられたギブスが痛々しい。
 私は何も言わずに嘉木堂の側まで行き、そして思い切り抱きしめた。
「あ、藍原さん?」
「よかった。本当によかった。嘉木堂……」
 もう二度と話せないかと思っていた。あのまま死んでしまうのではないかと思っていた。
 でも嘉木堂は生きてる。ちゃんと生きて、そして私に笑いかけてくれている。嘉木堂の笑顔を今日ほど愛おしいと思ったことはない。
「だ、大丈夫だよ。冥霊使いは普通よりちょっとだけ体が丈夫なんだ。だからそう簡単には死なないって、イタタタ!」
 抱きしめる力が強すぎたのか、嘉木堂は焦った声を上げた。
「おっと、スマンスマン。私も冥霊使いになって力が強くなったのかな」
 小さく笑いながら、私は嘉木堂の側にあるパイプ椅子に腰掛ける。
「リンゴ、食べるか?」
 多分、親御さんが持って来てくれたのだろう。窓辺のサイドテーブルにはフルーツバスケットが置かれていた。
「ああ、うん。アリガト……」
 はにかみながら笑う仕草がまた堪らない。
 嘉木堂を失いかけたせいか、前よりもずっと私は嘉木堂の事が好きになっていた。
「教授は何も覚えていないみたいだ。しれっとした顔で研究室に顔を出してるよ」
 果物ナイフでリンゴの皮を剥きながら、私は嘉木堂に話しかける。
「まぁ、冥霊使いじゃなくなったしね。あの時の事を覚えてないのも無理ないよ」
 そう、教授は冥霊使いではなくなった。
 『戦姫』に自分の冥霊を喰われてしまったから。
「藍原さんの方はどう? 大分、自由に使いこなせるようになってきた?」
「まぁな。けど、あの時みたいに長い時間は無理だな。せいぜい数秒が限界だ。それも一部だけ」
 冥霊を喰うには、自分の冥霊を完全な形で喚び出す必要があるらしい。あの時『戦姫』の全身を喚べたのは、『戦姫』が嘉木堂の『鬼』や教授の『白蛇』のように巨大なものではなく、私と同じくらいの大きさだったということもある。しかしそれ以上に、嘉木堂を助けたい一心で偶然出来たことなのだろう。その証拠に一部ではなく全身を喚び出すのは、あれ以来一度も出来ていない。
「まぁ、ゆっくり慣れていったらいいよ。『白蛇』の力もあるしね」
 教授の冥霊、『白蛇』の力は私の物になったらしい。だが別に変わった所はない。せいぜい前より少しはタフになったかなと思うくらいだ。これもまだ私が冥霊自体を使いこなせていないせいなのだろうか。
「そう言えば嘉木堂の左目、義眼なんだな。ちっとも気付かなかったよ」
「結構出来が良いからね。この目」
 言いながら新しい左目をいじる。
「交通事故に遭った時、嘉木堂は冥霊に覚醒したって言ってたよな。その時に『鬼』を喚び出したのか? 左目から」
「そう。六歳の時に居眠り運転してたダンプカーに跳ねられそうになってね。『鬼』の『爪』で何とかしのいだって訳さ。左目は見えなくなったけど、命があるだけましだよ」
 それで左からの反応が鈍かったのか。
 自分の体の一部は簡単に意思を通わせられるから『物』として扱える。私もひょっとしたら、自分の体液を媒介体にして『戦姫』に覚醒していたかもしれない。キッカケが飲み会の酒で本当に良かった。
「なぁ、冥霊使いって他にいるのか?」
「いるだろうね。僕はそういうの見抜く能力に疎いから、ハッキリ言えないけど。藍原さんなら慣れてくれば見ただけで分かるようになるんじゃないかな。まぁ凄い人は逆に隠しきってるから分からないけど」
 教授は私が冥霊使いだと見抜いていた。けど教授と嘉木堂はお互いに分からなかった。私は二人とはまだまだレベルが違う。でも……。
「嘉木堂。もし今回みたいな事があっても、絶対に私が守ってやるからな」
 この気持ちだけは誰にも負けない。嘉木堂を愛する者として。
 嘉木堂は私の言葉に顔を紅くし、困ったように苦笑した。
「そ、それって僕のセリフ……って言いたいけど、結局藍原さんに助けられちゃったしね。最初は藍原さんを守るために徹夜で見張ってたりもしたけど、最後には立場が逆転しちゃったね」
 徹夜……それで図書館であんなに熟睡してたのか。私を守るために、自分の身を削ってまで……。
 感激のあまり、私は目頭が熱くなるのを覚えた。
「嘉木堂――」
 そして愛の言葉を紡ごうと口を開いた時、ノックも無しに扉が開けられた。
「はーい、嘉木堂さーん。そろそろ尿を取る時間ですよー」
 ナース服の女性が尿瓶片手に軽い声を掛けてくる。そして私の姿を見て、しまったといった表情で口に手を当てた。
「あらー、ごめんさいねー。彼女来てたんだー。お邪魔だったかしらー」
 何だこの尻の軽そうな女は。いや、それよりも今重要な事を口走ったぞ。
「嘉木堂、お前今までこの女に下の世話をして貰ってたのか?」
「え? そ、それは、その……まぁ、僕今、両手が使えないし……」
「アタシもお仕事ですからー」
 何て事だ。こんな赤の他人に……。
 私は顔をしかめて立ち上がると、看護婦から尿瓶をひったくった。そして嘉木堂に真剣な顔を向ける。
「嘉木堂、これからは毎日私がお前の世話をしてやる」
「へ?」
 嘉木堂は顔を引きつらせ、足だけで器用に後ずさった。相変わらず高い身体能力だな。
「遠慮するな。私は嘉木堂のためなら何だって出来るぞ。何なら尿に限らず生理的欲求の解消全てを請け負ってもいい」
「あ、藍原さん。目が恐いんですけど……」
「私は本気だ嘉木堂。さぁ、後はお前が首を縦に振れば事は丸く収まる」
 ベッドの上に乗り、私は嘉木堂のズボンに手を掛ける。
「ちょ……! い、いや、やめてー!」
「良いではないか。嫌よ嫌よも好きよの内だ。さぁ、私に全てをさらけ出してくれ」
 まるで女の子のように泣き叫びながら許しを請う嘉木堂。
 お前は本当に私の心を掴むのが巧いな。大好きだぞ。これからもずっとな。

 【終】




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