あらすじ
かつて龍閃を討つため、共に戦った真性魔人・水鏡魎。 ついに動き出した水鏡魎。計画の初手を成すため、久里子、麻緒へと直接手を伸ばす。 久里子の失踪により、一端が垣間見え始めた魎の策謀。 麻緒と合流するため、夕薙病院に向かった玖音達。しかしソコで待っていたのは陣迂との邂逅。 玖音に呼び戻され、再び自室で合流した冬摩と朋華達。 美柚梨の自由を取り戻し、ひとまずの安息を得た玖音。 玖音の知略によって、久里子の捕らわれている場所へとたどり着いた冬摩達。 土御門財閥の館へと戻り、冬摩の帰りを待つ朋華達。しかし一向に戻ってくる気配は無い。辛く重々しい内面を抱えたまま、何かを求めて彷徨い続けている。 都心から離れた小屋の中。魎は玖音と会話する。ソコに込められていたのは六百年も昔からの想い。特別な感情。そして魎は先を見つめる。 朋華の失踪、御代の暴走、麻緒との再会。 冬摩の目の前で無残に散って行く命。視界に焼き付く血の光景の中、獰猛な意識が理性を断ち切る。 朋華を想い、暴走寸前の意識を辛うじて繋ぎとめる冬摩。 ソコは白い場所。景色も空気も、声も意識も。 魎を探すため、二手に分かれて行動を始めた冬摩と麻緒。 突如として冬摩の目の前に現れた魎。その口から語られる計画の全容。 消えていく。無くなっていく。躰が、一欠片も残さずに……。 あの激しい戦いから一ヶ月。偽りの区切りに苛立ち、戸惑い、悩む面々。 生ある者の心はひとところには留まらぬ。壱『這い寄りし序幕』
周囲に知られる事無く生き延びた彼は、再び表舞台へと姿を現す。
三年間行方を眩ませていた篠岡玲寺を連れ、彼の奇妙な企てが始まった。その真意の行く末は……。弐『幼き狂喜、猛き殺意』
そして魎の考えを読み始めた玖音。彼の発した一言が、また冬摩を変えていく……。参『交わらぬ想い』
暴走する冬摩、知略を巡らせる玖音、冬摩を憂う朋華、凶喜に浸る麻緒、
そして虚ろな心を抱いた玲寺と彼の真意を探る久里子。
それぞれの想いは、また魎の手中なのか……。四『拭えぬ憂慮』
そして時を同じくして、冬摩の前に魎が姿を現す。
怒りで我を忘れる程の戦いの最中、抱いていた葛藤がより鮮明な輪郭を帯び始めた。五『鬱屈と困惑』
大所帯に阻まれながらも、二人の仲は少しだけ進展……?
しかし遅れて入ってきた玖音の一言、そして美柚梨の出現により、事態はまた大きく揺れ動く。六『闇子の継ぐ血筋』
これまでの事実とソレに基づく推論から、魎の考えを冷静かつ的確に読んでいく。
そして裏を取るため、玖音は冬摩達と別れて行動を開始した。しかし、用意されていたのは意外な結末だった。七『血で結ばれし猛き力』
しかしソコにはすでに陣迂が回りこんでいた。
そしてぶつかり合う力と力。
陣迂との戦いの中、冬摩はかつての懐かしい想いを感じる。ソレはあの牙燕と拳を交えていた時のような――八『解き放つ』
そんな冬摩とは対照的に、麻緒は玲寺との狂気の宴に身を委ねる。哄笑を上げ、血に酔い、殺戮を求めて、天才児の力が開花する。そして最後に立っていたのは……。九『定められた敗北』
――荒神冬摩の敗北を。十『三番目の方法』
久里子の前で目まぐるしく変化し続ける状況。まさかコレは魎の罠……? いや、それならば……。
久里子は御代の後を追い、しかしたどり着いた場所に居たのは魎ではなく……。十一『殺す。殺せ』
そしてぶつかり合う陣迂と麻緒。凄絶な戦いの末、強者は弱者を見下ろし――十二『左の慟哭』
そして『死神』の口から紡がれる一つの可能性。久里子が立てる一つの仮説。
魎が狙っているのは――十三『シナした』
ボクは初めて、そこでシナした。そして頭を撫でてもらった。
間違っていない。コレでいい。ココが――ボクの居場所なんだ。十四『連なる不意』
冬摩は『白虎』で、麻緒は『玄武』で玖音の持つ『朱雀』を求める。
先に共鳴したのは冬摩の『白虎』。しかし現れたのは――十五『左腕、孵化、置きみやげ』
ソレはあまりに緻密で、あまりに突拍子も無く――。
『左腕の力』、『卵の孵化』、『龍閃の置きみやげ』、全ての言葉が一点に帰結する。十六『龍閃』
薄れ行く意識の中、冬摩の視界が最後に映し出したのは麻緒の姿。
そして――内側から死者の産声が上がる。十七『偽りの休息』
まだ何も終わってなどいない。その事は皆分かっている。
だがそれでも自然と気持ちは薄らぎ、そして安らいで行き――十八『うつろいゆく』
他からの関わりにより、ゆるみ、ひずみ、ふくらみ、はじけ、そしてうつろい続ける。
人であれ、魔人であれ、みな等しく……。
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